はじめに「資格を取ったら、実際どのくらい収入が上がるの?」勉強を続けるモチベーションを保つうえでも、将来のキャリアを考えるうえでも、これは非常に大切な問いです。「なんとなく収入が上がりそう」ではなく、公的なデータと、勤務先で適用される給与制度を分けて考えていきましょう。第6章・前編では、土木施工管理に関する公的な年収データの読み方と、資格取得が収入やキャリアにつながる仕組みを解説します。土木施工管理の年収を、公的データから見る厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、「土木施工管理技術者」に対応する全国の年収として625万円が掲載されています。出典は令和7年(2025年)賃金構造基本統計調査を加工したデータです(2026年10月12日確認)。ただし、これは1級土木施工管理技士だけの平均年収ではありません。同サイトの統計は対応する職業分類の集計であり、必ずしも土木施工管理技術者だけを表すものではないと案内されています。資格の有無や級ごとの年収差、資格取得による増額を示す数字でもありません。実際の年収は、勤務先、地域、経験、担当業務、役職、勤務時間などによって異なります。資格取得による収入への影響を考えるときは、職業全体の統計に加え、勤務先の給与制度や転職先の求人条件を確認することが大切です。出典:厚生労働省「job tag」土木施工管理技術者資格手当という「収入アップの仕組み」勤務先に資格手当の制度がある場合、資格取得が給与の増額につながることがあります。ただし、手当の有無、金額、対象資格、支給開始時期は会社ごとに異なります。確認しておきたいのは、次のような項目です。1級・2級それぞれの資格手当の有無と月額第一次検定合格による「技士補」も支給対象になるか資格取得時の一時金や、受験料・講座費用の補助があるか合格・交付申請・社内届出のどの時点から手当が支給されるか計算例として、月額2万円の資格手当が12か月支給されるなら、年間の支給額は24万円です。これは相場や当社の制度を示したものではなく、仮の条件による計算です。資格取得にかかった費用の回収を考える場合も、実際の支給額、支給条件、学習費用を確認して判断しましょう。転職市場での評価土木施工管理技士の資格は、転職市場においても非常に高く評価されています。特に以下の点が転職活動において強みになります。① 求人数が多い建設・土木業界の求人は慢性的な人材不足を背景に、有資格者を求める求人が常に多数存在します。資格を持っていることで、応募できる求人の数が格段に増えます。② 即戦力として評価される施工管理技士の資格は、「一定以上の施工管理の知識と実務能力がある」ことを客観的に証明します。採用担当者にとって、資格保有者はスキルを判断するひとつの明確な指標になります。③ 年収交渉がしやすくなる資格を持っていることで、転職時の年収交渉において「資格保有者としての市場価値」を根拠に提示できます。資格なしの状態と比べて、交渉の土台がしっかりします。2級と1級、どちらを目指すべきか「まず2級を取ればいいのか、最初から1級を目指すべきか」という疑問を持つ方も多いと思います。結論から言うと、現在の経験と、今後担いたい仕事に合わせて選ぶことが大切です。2級を取得してから1級へ進む道もありますが、1級の第一次検定に挑戦するために、先に2級を取得する必要はありません。1級第一次検定は、受検年度末時点で19歳以上であれば、学歴・実務経験を問わず受検できます。第二次検定には別途、所定の実務経験などの要件があります。比較項目2級土木施工管理技士1級土木施工管理技士配置技術者としての役割対応する業種の主任技術者の資格要件となる対応する業種の主任技術者・監理技術者の資格要件となるキャリアの考え方実務経験を積み、現場の技術上の管理を担う監理技術者など、担える役割を広げる収入への影響勤務先の資格手当や職務・評価制度による勤務先の資格手当や職務・評価制度による経営事項審査での評価技術職員として評価の対象となる技術職員として評価の対象となり、資格者証・講習等の要件によって区分が異なる監理技術者としての役割を目指す場合、1級取得は有力な選択肢です。ただし、すべての大規模工事で1級土木施工管理技士だけが必須という意味ではありません。必要な資格や配置要件は、工事の業種・契約条件等によって異なり、対応する技術士などが要件を満たす場合もあります。用語解説:経営事項審査(経審)国や地方公共団体などの公共工事を直接請け負おうとする建設業者が受ける審査です。技術職員の資格等も評価されます。入札参加の格付けには、経審に加えて各発注機関の評価が関わるため、資格取得だけで受注が決まるものではありません。参考:全国建設研修センター「1級土木施工管理技術検定のご案内」参考:国土交通省 関東地方整備局「経営事項審査について」会社が資格取得を支援する理由多くの建設会社が社員の施工管理技士取得を積極的に支援しているのは、単なる「社員への福利厚生」ではありません。有資格者の育成は、現場の技術力向上や配置要件への対応、経営事項審査での評価などにつながるため、社員の成長と会社の事業運営の両方にメリットがあります。資格取得支援制度(受験料補助・通信講座費用負担・試験前の特別休暇など)を設けている会社は少なくありません。勤務先にそのような制度があるかどうか、ぜひ確認してみてください。もし制度がない場合も、「資格取得のために支援してほしい」と会社に相談してみる価値は十分にあります。まとめ公的な職業統計の年収と、1級・2級ごとの年収や資格取得による増額は区別して読む年収は資格だけでなく、経験・職務・勤務先・地域などによって異なる資格手当や取得支援の有無・金額・支給条件を勤務先に確認する2級から1級へ進む道も、受検要件を満たして1級第一次検定から挑戦する道もある1級取得によって担える役割が広がる一方、配置要件は業種や契約条件によって異なる資格取得支援制度を確認し、今後のキャリアに合わせて活用しよう次回(第6章・後編)では、資格取得後のキャリアの広がりと、建設業界の将来性について詳しくお伝えします!筆者紹介阿部隼弥:株式会社メインライン・エンジニアリング技術人材採用課の課長。社内では主に人材の採用や広報活動を行っている。多くの技術者と面談をしていくなかで、「より土木の知識を身に着け、深く候補者との関係性を構築したい」という思いから、土木未経験ながら一級土木施工管理技士補の取得を決意し、体系的に学習中。