はじめに前編では、経験記述の基本構成と書き方の型をお伝えしました。「①工事概要→②課題・問題点→③実施した対策→④結果」という流れをしっかり押さえていただけたと思います。後編では、出題テーマ別の記述ポイントと、文章の質を高めるための添削の活用法について解説します。「型はわかった、でもテーマごとに何を書けばいいかわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。テーマ別:記述のポイントと注意点① 品質管理品質管理テーマでは、「設計図書に定められた品質基準をどのように確保したか」を記述します。記述のポイントどの工種・部位の品質が課題だったかを明確にする使用した品質管理の手法・試験・検査の名称を具体的に書く管理基準値(数値)と実際の測定結果をセットで書くと説得力が増すよく使われる対策の例コンクリートの品質管理:スランプ試験・空気量試験・圧縮強度試験の実施盛土の締固め管理:締固め度試験(RI計器等)による品質確認溶接部の品質管理:超音波探傷試験・外観検査の実施避けたい表現「品質に問題が出ないよう、適切に管理した」→何をどう管理したのかが伝わりません。試験名・管理項目・基準値など、具体的な内容を必ず盛り込むようにしましょう。② 安全管理安全管理テーマでは、「労働災害を防ぐためにどのような取り組みをしたか」を記述します。建設現場特有のリスクに対して、具体的な安全対策を講じた経験を書きましょう。記述のポイントどのような災害リスクが存在したかを具体的に示す(墜落・転落・重機との接触・土砂崩壊など)リスクに対応した具体的な安全対策を複数記述するKY活動・安全朝礼・現場パトロールなどの取り組みにも言及するよく使われる対策の例高所作業:安全帯の着用徹底・手すり・親綱の設置・作業床の確保重機作業:立入禁止区域の設定・誘導員の配置・重機と作業員の動線分離掘削作業:土留め工の設置・地山の観察記録・湧水処理ワンポイントアドバイス安全管理は「やって当たり前」の取り組みが多いテーマです。他の現場でも行われる一般的な対策だけを並べるのではなく、その工事特有のリスクと、それに対応した固有の対策をしっかり書くことで差がつきます。③ 工程管理工程管理テーマでは、「工期を守るためにどのような工夫・対応をしたか」を記述します。計画通りに進まなかった要因と、それに対してどう対処したかがポイントです。記述のポイント工程遅延の原因(悪天候・地盤条件の変化・資材調達の遅れなど)を具体的に示す遅延を取り戻すために実施した対策を記述する工程表(バーチャート・ネットワーク工程表)を活用した管理についても触れると良いよく使われる対策の例作業時間の延長・休日作業の追加による工程挽回作業班の増員・重機の追加投入による施工速度の向上並行作業(クリティカルパスの短縮)による工期短縮天候リスクを見込んだ予備工程の設定注意点工程管理の記述では、「遅れが出た→残業した」という単純な記述に終わってしまうケースが多く見られます。なぜ遅れが生じたのか・どのように判断して対策を講じたのかという思考プロセスまで書くことで、管理者としての実力が伝わります。④ 環境保全環境保全テーマでは、「工事による環境への影響をどのように抑制したか」を記述します。近年出題頻度が上がっているテーマのため、対策しておくと安心です。記述のポイント具体的な環境への影響(騒音・振動・濁水・粉塵・悪臭など)を明示する周辺への影響を最小化するために実施した対策を記述する測定・モニタリングを実施した場合はその内容にも触れるよく使われる対策の例騒音・振動対策:低騒音型建設機械の採用・防音シートの設置・作業時間の制限濁水対策:沈砂池・濁水処理設備の設置・土砂流出防止シートの敷設粉塵対策:散水による粉塵抑制・防塵ネットの設置「書けない」と感じたときの対処法経験記述の準備を始めると、「自分の経験はどれも地味で、書けるようなネタがない…」と感じる方がいます。しかし、特別な大工事でなくても、経験記述は十分に書けます。① 「当たり前にやっていたこと」を言語化する毎日の現場で「当然のこととして」やっていた管理業務も、文章として書き起こすと立派な経験記述になります。「毎朝安全確認をしていた」「コンクリート打設前に配合確認をしていた」——こういった日常業務を、「なぜやったのか・何を確認したのか・どんな基準で判断したのか」という視点で掘り下げることが大切です。② 上司・先輩に記憶を補完してもらう自分一人では思い出せない工事の詳細も、当時一緒に働いていた上司や先輩に聞くと記憶が蘇ることがあります。数値・工法名・当時の状況など、積極的に周りの人の力を借りましょう。③ 実際の工事書類を見直す施工計画書・安全管理記録・品質管理記録・写真帳など、過去の工事書類を見直すことで記憶が具体的によみがえります。手元に書類が残っている場合は、ぜひ活用してください。添削を活用して文章の質を高めよう経験記述の対策で、独学との差が最も大きく出るのが「添削」の有無です。自分で書いた文章は、自分では気づきにくい問題点があります。添削で指摘されやすいポイント課題と対策のつながりが論理的でない「誰でも書けそうな一般論」になっていて具体性がない数値・工法名などの根拠が不足している文章が長すぎる・短すぎるなど、バランスが悪い誤字・脱字・文体の不統一添削を受ける方法方法特徴通信講座の添削サービス専門家に複数回添削してもらえる。費用はかかるが品質が高い職場の上司・先輩費用がかからず、現場目線のアドバイスがもらえる施工管理技士の有資格者試験に精通した視点でのフィードバックが期待できる少なくとも1回は第三者に読んでもらうことを強くおすすめします。自分では「完璧」と思っていた文章でも、読み手の視点から見ると改善点が見つかることがほとんどです。経験記述の準備スケジュール経験記述の準備は、試験の4〜6ヶ月前から始めるのが理想です。時期(試験までの残り期間)やること4〜6ヶ月前題材となる工事を選ぶ・工事概要を整理する3〜4ヶ月前3テーマ分の文章を書いてみる(粗削りでOK)2〜3ヶ月前添削を受けて文章を修正・改善する1〜2ヶ月前完成した文章を繰り返し読み込んで記憶に定着させる直前1ヶ月本番を想定して手書きで練習する(時間を計って)まとめ品質管理は「試験名・管理基準値・測定結果」を具体的に記述する安全管理はその工事特有のリスクと固有の対策を書くことで差がつく工程管理は「遅れの原因→判断プロセス→対策」まで掘り下げて書く環境保全は近年出題頻度が上昇。騒音・濁水・粉塵対策を押さえておこう「書けない」と感じたら、日常業務の言語化・上司への相談・工事書類の見直しを試みる必ず第三者に添削してもらい、文章の弱点を客観的に把握する次回(第6章・前編)では、資格取得後の年収・キャリアの変化について、具体的なデータをもとに解説します!筆者紹介阿部隼弥:株式会社メインライン・エンジニアリング技術人材採用課の課長。社内では主に人材の採用や広報活動を行っている。多くの技術者と面談をしていくなかで、「より土木の知識を身に着け、深く候補者との関係性を構築したい」という思いから、土木未経験ながら一級土木施工管理技士補の取得を決意し、体系的に学習中。メインラインエンジニアリングは、高速道路の発注者支援業務の会社です資格取得は、あなたの未来を切り拓く大きな一歩となります。発注者支援業務の解説ページはこちら