はじめに「経験記述って、何をどう書けばいいのかまったくわからない…」第二次検定に挑む多くの方が、最初にぶつかる壁がこれです。経験記述は、マークシートのように「正解を選ぶ」問題ではなく、自分の言葉で工事経験を文章にするという、これまでとはまったく異なるアウトプットが求められます。第5章では、この経験記述を前編・後編に分けて徹底解説します。前編では「経験記述とは何か」「基本的な構成と書き方」を丁寧にお伝えします。経験記述に対する漠然とした不安を、具体的な「やるべきこと」に変えていきましょう。経験記述とは?経験記述とは、第二次検定で出題される論文形式の記述問題です。自分が実際に携わった土木工事を題材に、施工管理の経験を文章で記述します。試験では最初に「工事の概要」を記入し、続いて出題されたテーマに沿って経験を記述するという流れになっています。配点が高く、ここで合格点が取れるかどうかが第二次検定の合否を大きく左右すると言っても過言ではありません。出題されるテーマは主に以下の4つです。テーマ内容品質管理工事の品質基準を満たすためにどんな対策を講じたか安全管理労働災害を防ぐためにどんな取り組みをしたか工程管理工期を守るためにどんな工夫・対応をしたか環境保全騒音・振動・濁水などの環境への影響をどう抑えたか試験ではこの中から1〜2テーマが出題されます。どのテーマが出題されるかは事前にわからないため、最低でも「品質管理」「安全管理」「工程管理」の3テーマ分を準備しておくことが鉄則です。経験記述の基本構成経験記述には、採点者に伝わりやすい「型」があります。この型に沿って書くことで、論理的でわかりやすい文章になります。PART①:工事概要の記入まず最初に、題材とする工事の概要を記入します。ここは論述ではなく、以下の項目を簡潔に記載するフォーマット形式です。工事名:〇〇橋梁補修工事、〇〇地区道路改良工事など工事場所:〇〇県〇〇市〇〇地区工期:〇〇年〇月〜〇〇年〇月発注者:〇〇県、〇〇市、国土交通省〇〇事務所など請負金額:〇〇百万円工事の内容:工事の種類・規模・主な施工内容を簡潔に工事概要を書くときのポイント 請負金額が大きすぎたり、工期がごく短い工事は信憑性に欠ける印象を与えることがあります。規模感として現実的な工事を選ぶようにしましょう。また、自分が施工管理に直接関わった工事を選ぶことが重要です。PART②:課題・問題点の記述次に、その工事において出題テーマに関して直面した課題や問題点を記述します。ここで大切なのは、「一般的に工事現場ではこういう問題がある」という教科書的な話ではなく、その工事ならではの具体的な状況を書くことです。【良い例】本工事は、市街地における既設橋梁の補修工事であり、交通量が多い片側交互通行規制下での作業となった。作業スペースが限られる中での高所作業が多く、作業員の墜落・転落リスクが高い状況であった。【避けたい例】安全管理において、作業員が怪我をしないよう注意する必要があった。「良い例」のように、現場の状況・条件・リスクを具体的に描写することで、採点者に「この人は本当に現場で管理した経験がある」と伝わります。PART③:実施した対策・処置の記述課題に対して、実際に自分(または自分のチーム)がどのような対策を講じたかを記述します。ここが経験記述の核心部分であり、最も配点が高いパートです。対策を記述する際は、以下の3点を意識してください。① 具体的な数値を入れる「適切に管理した」「十分な対策を講じた」という曖昧な表現は避け、できる限り具体的な数値を入れましょう。「コンクリートの打設温度を5℃以上に保つため、養生シートで覆い保温養生を実施した」「足場の点検を毎朝作業開始前に実施し、点検結果を記録・管理した」「1日の掘削量を50㎥以内に抑え、工程への影響を最小限にした」② 複数の対策を列挙するひとつの課題に対して、複数の対策を実施した場合はすべて記述しましょう。対策が多いほど、施工管理の取り組みの充実度が伝わります。③ 「なぜその対策をとったか」の理由も添える対策の内容だけでなく、「〇〇というリスクがあったため、〇〇という対策を実施した」という形で、理由と対策をセットで書くと論理的な文章になります。PART④:結果と評価の記述最後に、実施した対策によってどのような結果が得られたかを簡潔に記述します。「上記の取り組みにより、工期内に無事故・無災害で工事を完成させることができた」「品質管理試験の結果、すべての検査項目で設計基準値を満たすことを確認した」結果は「うまくいきました」という成功体験を書くのが基本です。「失敗した経験」を書く必要はありません。題材となる工事の選び方経験記述に使う工事は、以下の観点で選ぶと書きやすくなります。自分が施工管理に直接関わった工事(他の人の経験を流用しない)工期・規模が現実的な工事(小さすぎず、大きすぎず)課題と対策が明確に語れる工事(「あのとき苦労したな」と思える工事が書きやすい)複数のテーマで使い回せる工事(同じ工事で品質・安全・工程の3テーマに対応できると準備が楽)まだ現場経験が少ない方は、自分が経験した工事を上司や先輩に相談しながら整理してみましょう。経験が豊富な方は、複数の工事の中から最も記述しやすいものを選ぶのがおすすめです。まとめ経験記述は第二次検定の最重要問題。合否を左右する高配点パート出題テーマは品質管理・安全管理・工程管理・環境保全の4つ。最低3テーマ分を準備する基本構成は「①工事概要→②課題・問題点→③実施した対策→④結果」の4ステップ対策の記述には「具体的な数値」「複数の対策」「理由とセットの記述」の3点を意識する題材となる工事は「自分が直接関わった・複数テーマで使い回せる工事」を選ぶ次回(第5章・後編)では、テーマ別の記述ポイントと、添削を活用して文章の質を高める方法を詳しく解説します!筆者紹介阿部隼弥:株式会社メインライン・エンジニアリング技術人材採用課の課長。社内では主に人材の採用や広報活動を行っている。多くの技術者と面談をしていくなかで、「より土木の知識を身に着け、深く候補者との関係性を構築したい」という思いから、土木未経験ながら一級土木施工管理技士補の取得を決意し、体系的に学習中。メインラインエンジニアリングは、高速道路の発注者支援業務の会社です資格取得は、あなたの未来を切り拓く大きな一歩となります。発注者支援業務の解説ページはこちら